朝の空気は、少しだけ甘かった。
特定日。
並びは長い。
誰もが、今日は“ある”と信じている。
私も、その一人だった。
1
抽選箱に手を入れる。
紙の感触。
引き抜いた瞬間、店員が声を張った。
「7番です」
周囲がざわめく。
悪くない。
いや、かなり良い。
私は小さく拳を握った。
今日は、選べる側だ。
2
開店と同時に、ジャグラー島へ向かう。
迷いはなかった。
マイジャグラーV の角台。
前日大きく凹んだ台。
上げ狙い。
理屈も揃っている。
番号も揃っている。
勝つ条件は、整っているはずだった。
3
100G以内にBB。
さらにREG。
グラフが、ほんの少しだけ上を向く。
「ほらな」
胸の奥で、何かが膨らむ。
良番。
早当たり。
今日の私は、選ばれている。
そんな錯覚。
4
2000G。
BBが先行する。
合算は悪くない。
だが、REGが伸びない。
ブドウも、わずかに重い。
違和感はあった。
だが私は、違和感よりも番号を信じた。
“7番なんだから”
意味のない根拠。
でも、その根拠にすがった。
5
3000G。
REG 1/360。
グラフは横ばいから下降。
隣の台が、静かに右肩上がりを描いている。
私は、席を立てなかった。
良番を引いたのに、逃げるのは負けだと思った。
番号に、責任を押し付けた。
6
追加投資。
ハマり。
さらに投資。
“ここから”
その言葉が、何度も頭をよぎる。
だが、光は遠い。
レバーを叩く音だけが、やけに大きい。
7
夕方。
差枚は大きくマイナス。
REGは最後まで弱いまま。
私はようやく理解する。
抽選は、ただのスタート。
番号は、設定を保証しない。
保証するのは、データだけだ。
8
席を立ったとき、悔しさよりも冷静さがあった。
良番は、魔法じゃない。
早当たりも、保証じゃない。
慢心こそが、一番の敵だった。
9
駐車場は、まだ明るい。
私はスマホを開き、メモに書いた。
「良番でも、REGを見る」
「違和感は無視しない」
「番号で粘らない」
今日の収穫は、それだけだ。
学び
✔ 良番=高設定ではない
✔ BB先行は罠になりやすい
✔ 違和感を言語化できるかが分岐
慢心は、静かに忍び込む。
そして気づかないうちに、
レバーを重くする。
次回予告
第3話「奇跡が起きなかった朝」
光らない朝。
それでも、席を立った理由。
奇跡を待たなかった男の話。




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